[や]
『』 

『8つの物語  思い出の子どもたち』

フィリパ・ピアス 作  片岡 しのぶ 訳  あすなろ書房   2002・12
日常に近くて・・・・そしてちょっと遠い、懐かしくてちょっと怖くて、ちょっとほろ苦く
という不思議な短編集です。うん、ピアスらしい、と言えば、とってもらしい短編集。
小さい頃からの思い出の品物を、どうしても捨てることのできないチャーリーは
仲が悪くなった両親が、まだ仲良かった自分の小さい頃の思い出の場所がどうしても
思い出せない。「行列(キュー)をしよう」という小さなヒントを、姉が解き明かしてくれ
そこが「キューガーデン」という植物園だったことを知る。もうその幸せな時代には戻れない
と自然に気付くことによって、チャ―リーは現実を受け入れ、母親にもやさしく向かえるようになる
という「まつぼっくり」という話をはじめ、ちょっと切ない物語が入っている。

う〜む、でも、これはやはり大人向け?もしくはヤングアダルト向けですな。
短編集としては、「幽霊を見た10の話」のほうが、魅力的かなぁ。

『山にのまれたオーラ』

ビエルン・ロンゲン 作  富河野 与一 訳  富山 妙子 挿絵  岩波少年文庫
おばあさんが孫達におじいさんが若い頃、山崩れに巻き込まれ、やぎ3匹と洞穴に閉じ込められ、助け出されるまでのことをはなしてくれるおはなし。おばあさんのおはなし=ファージョン、山羊ととじこめられる=シンガーを連想するが、これもいいおはなし。挿絵も素朴でいい。ただ、とてもゆったりとしていて、その分、現代に受け入れられにくいのか、復刊されてないようだ。暖かくていいお話なのに、残念。☆☆

『山の上の火――エチオピアのたのしいお話――』

クーランダー、レスロー 文  渡辺 茂男 訳  岩波書店
副題にもあるとおり、エチオピアの楽しい昔話を集めたお話集です。
語りやすく、子供達も楽しめるいいおはなしがいっぱい入っていて、ストーリテリングにもよく使われます。

「山の上の火」はお金持ちの召使をしているアルハが、ふとしたことから「スルタ山のいただきに裸で一晩
つったっていて生き延びれるか?!」という賭けをご主人とし・・・その顛末のものがたりです。

ほかにも、思わず笑ってしまう「グラのきこり」「アディニハァスの英雄」「おはなしのだいすきな王さま」
などのおはなしものっています。

そして・・・・・・一番最後にとても短いおはなしですが、「黄金の土」という、とてもすてきなおはなしが
のっています。
エチオピアの国、人々の古い歴史や、誇り高い文化を垣間見させてくれるような、気品のあるおはなしです。

『山のクリスマス』
ルドヴィッヒ・ベーメルマンス 作  光吉夏弥 訳編  岩波書店
街でおかあさんと二人暮しをしているハンシ少年が、初めてひとりで山のおじさんのところへ行き、
むかえたクリスマスの物語です。
人々の暖かい心持ちが、しみじみと伝わってくる暖かい絵本です。
・・・絵本と言っても、読み物かも?!
読み聞かせに使うというより、おうちで、ぬくぬくぬくもりながら読みたい絵本です。

実は・・・子供のころからの愛読書です。
暁は、「マドレーヌ」ちゃんとは、大人になってから知り合った(爆)のですが、この本は、
子供のころから好きで、同じ作者と知ってびっくりしました・・・。
品切れになることの多い岩波の子どもの本シリーズですが、今は手に入るみたいです!
ちなみにうちには、実家から隠し持ってきた(?!)昭和41年出版のものとこっちで「保険」として
手に入れた 1994年版があります。

『闇の女王にささげる歌』

ローズマリ・サトクリフ 作  乾 侑美子 訳  評論社  2003・1・19
ケルトの伝説の女王ブーディカの物語。ローマの侵攻によって、植民地化されたイケニ族の女王
ブーディカは、度重なるローマの要求に国の利益を考え従ってきたが、国王の死をきっかけに
隷属を強いるローマに対し、他の部族とともに反旗を翻し立ち上がる。
その戦いを、女王の吟遊詩人の目を通して描いた歴史小説。

トクリフの作品には珍しく、女性が主人公です。力強く部族の尊厳、未来のために行動する女王で
ありながらも、揺れ動く心も垣間見せるブーディカを、魅力的に描いています。
これもまた・・・・決して明るい結末ではなく、読みながら暗澹たる気持ちになる部分もありますが
サトクリフが、自分のルーツのひとつとして描きたかったであろうケルトの人々が
生き生きと描かれています。

『闇の底のシルキー』

ディヴィッド・アーモンド 作  山田 順子 訳  東京創元社

キット・ワトソンは、おばあちゃんに先立たれて元気をなくしているおじいちゃんと一緒に住む為に
うらぶれた炭鉱町に、両親と一緒に引っ越してきました。

キットは転校した学校で、ジョン・アスキューとその仲間たちと知り合い、彼らが行っていたゲームに
参加することになります。
それは、もう使われていない炭鉱の暗闇の中でする「死」というゲームでした。

以前紹介した「肩甲骨は翼のなごり」の作者の作品です。
決して恵まれた状況下にはいない、それぞれの登場人物たち(キットやジョン、アリー、そして彼らの
家族たち)
なんですが、それぞれがより自分らしく、真心を込めて生きようとする姿に、共感がもてます。
そして、自分がそこに居るがゆえに、自分の大切な人の存在も大切にしようとする必死な姿勢にも

感動を覚えます。・・・・・って、何を書いているんだか?!(汗)
不思議な物語です、ぜひご一読ください!

[ゆ]

『ユウキ』

伊藤 遊 作  上出  慎也 絵  福音館書店 2003・8・2
札幌郊外に住むケイタは小6の元気な男の子。小学校のサッカークラブに所属しているが、残念なことに
強力なメンバーだった転校生のユウタは、5年生の終わりに引っ越してしまっていた。
6年の新学期、もしかしたら新しい転校生がくるかも?という期待を持ちながら登校してみると
なんと新しい転校生は「優希」という女の子だった!小2のとき仲良かった転校生もゆうきという名前だった
ケイタにとって、不思議すぎる偶然の幕開けだった!
小学生の友情や生活を描いた物語です。しっかりした小6やなぁと思う部分もあったけど、
メッセージははっきりわかり易く伝わってきました。
「ユウキ」という名前に込められた思い・・・・作者の気持ちが伝わります。

ふっと・・・・大昔、小説を書こうとして、主人公の名前を「ケイジ」にしようとしたことを思い出しました。
・・・筋?まーったく覚えておりません。(爆)

『ゆうびんやのくまさん』
フィービとセルビ・ウォージントンさく・え  まさき るりこ 訳  福音館書店
くまさんは、毎朝とてもはやくおきます。くまさんは、ゆうびんやさんなのです・・・。
・・・小さくて、愛らしい絵本です。
主人公のくまさんは、どうやらテディベアのようですが、心優しいしっかり者。
家々にクリスマスプレゼントやカードを届けながら・・・真心も届けているようです。
細かく丁寧に描かれた絵本です。隅々まで探してみると、いろんな楽しいしかけがあります。
ゆっくり、楽しんでほしい絵本やなぁと思います。
このくまさんには、ほかにもシリーズがありますよ〜〜!!
『床下の小人たち』『野に出た小人たち』『川をくだる小人たち』『空をとぶ小人たち』
メアリー・ノートン 作  ダイアナ・スタンレー 挿絵  林 容吉 訳  岩波書店
イギリスの古いお屋敷の床下で、ひっそりと「借り暮らし」をしている小人たち
ポッド、ホミリー、アリエッティのお話です。

いわゆる妖精もの、小人ものとは、ちょっと違った雰囲気・・・小学生の頃にはじめて出会って
すごい勢いで当時出版されていたこの4冊を読んだ記憶があります。
当時から好きなんですが・・・・・・好きなんですがなんか釈然としない、っていうか?!
ずっとその理由がわからなくて、引っかかっていたのですが、今回それがちょっとわかったかな?!

暗いのです、はい。アリエッティは、両親の愛を一杯に受けて育っていますが、
同じ年頃の友達には恵まれてはいません。
借り暮らしの小人たちは、人間とはかかわりを持たない(人間に見られてはいけない)というのが鉄則で
でも、好奇心旺盛なアリエッティは、人間とかかわりを持ってしまいます。
そして、それがきっかけとなって、事件がおこり・・・・というのが4つの物語に繰り返されます。
なんだかね・・・エピソードのひとつひとつは、生き生きしていて、小道具とかも楽しいし
特にこのしっかりしたおとうさんのポッドは魅力的なんですが、「明るい未来」っていうのとは
ちょっと違うかんじなのです。
もちろん、無条件に明るい未来が約束されてる物語、ってのもうそ臭いかもしれないけれど、
もうちょっと、どうにかならなかったのかなぁ?というかんじ。

ほんとうは、もう一冊あるのですが、この装丁で出ているのは、この4冊のみで、
一番最後に書かれた本は、同じ岩波ですが、少年文庫の装丁で出ています。

『雪の中のリサベット』

アストリッド・リンドグレーン 作  イロン・ヴィークランド 絵  石井 登志子 訳  徳間書店  2003・2・17 
ピッピでおなじみの作家リンドグレーンの短編です。以前篠崎書林から絵本のかたちで出ていたものを
小さい子どもたち(っていうか小学校低学年)が自分で読みやすいように?!本の形(大きさ)で
徳間から再版されました。

リサベットはおねえちゃんのマディケンが熱を出したので、クリスマスの買い物をお手伝いのアルバと
一緒にでかけます。アルバにお店の前で待っているように、といわれていたのに、リサベットはつい
知らない男の人の馬車の後ろに飛び乗ってしまいます。途中の森で降ろされてしまったリサベットは
泣きながらも、どうにかしてうちへ帰ろうとしますが・・・・。
美しい絵と、ドキドキするような物語・・・・いいおはなしです。ぜひ女の子に読んでほしいなぁ。
(って、男の子が読んでくれても、楽しいと思うけど。笑)

実は・・・・・絵本の装丁をしたやつ、持っていたにもかかわらず、つい「あ、新刊やんっ!」と
買ってしまいました。どうもりんドグレーンは今ひとつ・・・と常々思っているので、読みながらも
ダブっていることに気付かず・・・・・(なんとなく表紙は見たことあるような気がしてたけど、てっきり
図書館で見たのだと。)最後の解説を読んで「あああっ!」・・・やはり本棚にありましたがな。(爆)
でも、両方を見比べてみて、なんとなく自分自身の粗忽さにも納得。随分印象が違います。
小さい版になって、ページ数が増えた分、かえって読みやすく絵も見やすくなっていて、
これはいい形で再版されたなぁと思いました。

『指輪物語』(『旅の仲間』『二つの塔』「王の帰還』)

J・R・R・トールキン 作  アラン・リー 絵  評論社<
言わずと知れた、あの映画『ロード オブ ザ リング』の原作本です。
暁は、蔵書としては、文庫本しか持ってないんですが、この分厚い豪華本は、字も大きく、
そしてなにより、美しいアラン・リーによるカラーの挿絵がついています。

ただ・・・・・買えないっす、1冊7800円。まぁ、中途半端な本を買うことを考えたら、一生の家宝
として(爆)とか、
がんばった自分へのご褒美とか・・・・買って買えないもんじゃぁ、
ないんでしょうけど、勇気いります。(笑)

某所で・・・・1冊読むのに何時間かかりますか?という質問を書いてはった方がおられましたが・・・・<
こればっかりは、一概にはお答えできません。
暁個人の体験としては・・・・第一回目は・・・途中で投げ出し、1年以上、1ページも
すすみませんでした。(爆)
(それがたぶん18〜9才の頃。・・・・遠い目。)
「すべてのファンタジーの原点」とかまで言われちゃうと、なんだかちょっと身構えちゃいますが、
どうぞ、気楽に(って、重いで、この本。笑)手にとって、開いてみてください。
そして、フロドと一緒に旅にでましょう!!

『夢を追う子』

W・H・ハドソン 作  駒井 哲郎 画  西田 実 訳  福音館書店
kapiさんのブックレビュウを読んで、「読んでみたいなぁ!」と思い探した本です。
地元の老舗(・・・汗)子供文庫へ、探しに行ったら、図書室の方には置いてなく、奥の閉架の書架に
置いてあるのを探してきてくださいました。「この本、読んだことある?どうしてこの本なの??」と
すっごく興味を持ってくださって(爆)カンタンにいきさつはお話したものの「不思議な本よね〜、
なんて言ったらいいのか・・・。」とのこと、ますます興味が湧きました。(笑)

おはなしは・・・・・非常に淡々と進んでいきます。荒野に両親と住むマーチン少年が
ふとしたことから、荒野に出て、遠くの山を目指して旅に出る・・・・・う〜ん、ちょっと違うような?!気も
するけど・・・・その旅の中で、いろいろな人や出来事に会い・・・・・・・・・最後は??
これ、最後はどうなるの??どうなったの????
・・・・・と、疑問符を残しつつ読み終わりましたが。
不思議な物語でした、ほんま。あれって・・・・・全部夢だった、という意味なんでしょうか?
それとも、最後は両親の元へ無事帰りつける??いや、あの時点では、もうマーチンは
両親の存在自体忘れていたのでは???(って、そんな。汗)
嫌いじゃないですが、不思議な物語でした。
ただ、この表紙のエッチング??主人公の姿をぼやかすためか??横線で主人公を隠してますよね?
それがちょっと、好みではなかったりしました。(・・・・本筋とは関係ないっすね。汗)

[よ]

『妖精ディックのたたかい』

K.M.ブリッグズ 作  コーディリア・ジョーンズ 挿絵 山内 玲子 訳  岩波書店
ホバディ・ディックは、屋敷つきの妖精です。ディックが住み着いているウィドフォード屋敷は、持ち主が変わり
新しくウィディスン一家が引っ越してきました。都会で暮らしていたウィディスンの妻は、田舎の暮らしには
なかなかなじめませんでしたが、子供たちは不器用ながらも、田舎の暮らしに溶け込んでいきました。
そして、奥様の小間使いとして働きにきたのが、この屋敷に縁のあるアン・セッカーでした。

この物語の作者、K・ブリッグズは、イギリスの有名な民俗学、妖精学の研究者です。この作品はその彼女の
豊富な知識、造詣に基づき、子供の為に描かれた、妖精物語です。
実は、下の方に紹介を載せた「ジャッキー巨人を退治する」の扉に、このK・ブリッグズへの献辞が書かれていて
それもあって、今回読み返してみました。
彼女の作品はもう1冊あって、「魔女とふたりのケイト」という「くるみわりのケイト」を題材にしたもので、以前は
そちらの方に惹かれていたのですが、今回読み返してみて、やっぱりこのディックの物語の方がいいなぁ!と
思った次第です。・・・・・・どこがいいか?!を言葉で表すのは、なかなか難しいけれど、このディックの物語には
人間同士の絆やつながり、お互いを尊重する気持ちと、妖精同士の絆や協力関係、尊重する気持ちなどなどが
それぞれ濃密に描かれていることかな?と気がつきました。いい物語です、ほんま。

『妖精物語』上・下

オーピー夫妻 編・著  神宮 輝夫 訳  草思社
イギリスの伝承文化研究家のオーピー夫妻による、イギリスに言い伝えられている昔話を集め、
研究したもの。
誰もがどこかで一度はきいたことがあるような『赤ずきん』『シンデレラ』『ジャックとマメの木の話』
などなどが
素朴で力強い言葉で語られます。

そして、研究書としても、面白く、また、たくさんの貴重な図版(古いもの多し。ラッカムやらデュラックを
はじめ、古い木版画の挿絵なども、美しくて、見ごたえがあります。)

『預言の子 ラノッホ』
ディヴィッド・クレメント・ディヴィーズ 作  多賀京子 訳  徳間書店
徳間の新刊案内で見つけてから、ずっと気になっていた本、やっと読み終わりました。
手元に来てから、「読むぞ!」と決心するまでにちょっと時間がかかり(・・・分厚いもんで。あんなに
待っていたのに?!)読み始めてからも、読み終わりまで数日かかりました。
乱読、速読の暁としては珍しい現象?!だったのですが、理由は・・・読み急ぎたくなかったから、かな。

スコットランドがまだスコーシアと呼ばれていた昔、そこに群れを作り住む鹿たちの世界は
変化の時代を迎えようとしていた。
ラノッホは、野守(群れを狼などの危険から守る役)ブレッヘンの息子として生まれたが、
預言に歌われた救い主のように、額に白いオークの模様をつけていた・・・。

一言で言ってしまうと、ラノッホの成長の物語なんですが、鹿の世界を舞台に描かれているものの、
なんだか人間の世界を見ているようで、身につまされるものがあります。
背負う荷の重みにひしげそうになりながらも、立ち上がろうとするるラノッホ・・・。見守る「柳」・・・。
う〜ん、この作家、次回作が待たれます。

モドル

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